東伊豆ボート釣り――網代(後編)

釣行記

前編よりつづく
この魚は何?
 この間南伊豆で釣ったソウダガツオほどは引きませんが、それでも俊敏に横走りする痛快な引き味の魚です。上げてみると、写真の魚でした。仕掛けはぐちゃぐちゃになっています。そのへんはとっても青物っぽい(^^; 魚体はアジを細くしたような感じ、目はイナダに似ていますが、イナダ特有の人相の悪い黒い目張りは入っていません。側線はアジと同じようなカーブを描いていますが、ゼイゴはありません。何より目立つのは、黄色い尾びれと鮮やかな青い2本の縦線です。

 木こりはハタと困ってしまいました。これは食える魚なのか、釣れたことを喜んでいいのか…… まさか毒魚ということはないと思うけど、それにしても鮮やかな青線が熱帯魚っぱくてちょっと毒々しいと思えなくもない…… アジの仲間なのか、全然違う種類の魚なのか、なんとも判別がつかないまま、クーラーに入れました。帰って本かネットで調べればわかるだろう。

 この後も、10mのタナでコマセを撒くとこの魚がかかりました。はっきりとした遊泳層を持っているようです。釣り味はいいのですが、正体がわからないのでもうひとつウキウキできないのが残念です。この魚は都合7匹ほど釣り上げましたが、もっと熱心に釣ればたくさん釣れたと思います。

 この魚の15cmくらいの小さいのが1匹だけ釣れたので、生きエサのヒラメ仕掛けを下ろしてみました。しばらくすると、竿先がガクガクと揺れてそのまま海面に突っ込みました。「お! 来た!」と思って、しばらく食い込むのを待って聞きアワせてみたのですが、乗りません。仕掛けを上げてみたらハリスから先が全部なくなっていました。これはなにかよほどの大物がかかったのでしょうか。フグの仕業だったのでしょうか。謎です。

フグ登場!
 遊泳層によって釣れるものがどう違うのか、2本の竿をタナをいろいろに変えて投入し、それぞれコマセ釣りをしてみました。水深10m以内ではエサ取りにきれいにエサをしゃぶられてしまいます。10〜13mくらいのところが上の写真の魚。水深20〜30mではアタリなしだけど置き竿するとハリスは切られている、つまりフグがいるのでしょう。水深30mを超えて底近くでは、なぜかフグが鈎にかかりました。良型のサバフグでした。フグは垂直方向によく引きました。後で図鑑で見たらシロサバフグという無毒のフグのようでした。しかしもちろんリリース。クロサバフグという強毒の種類もいるそうなので、やはりフグは恐いですね。

 しかも、このフグ、1匹かかると40mの底からもう3、4匹ピラピラと水面まで追いかけてきます。「なになにー、何か面白いことあるのー!?」って感じです。仕掛けの巻上げと同じ速度で泳ぎ上って来られるのだから、結構遊泳力あるのですね。ハリス3号のサビキ仕掛けを海底まで沈めてコマセ振ったら、いきなりゴンゴンとあたって、どんどん追い食いして、ものすごい疲れるやりとりの末に上がってきたのがサバフグ4匹、ということもありました。サバフグの4重連はとんでもない力がありますね。4匹で暴れられると抜き上げることもタモですくうこともできず、結局このときばかりは、上から順にハサミでハリスを切ってリリースするしかありませんでした。

 しかしまあ、このサバフグのおかげで20組以上持っていた仕掛けがことごとくなくなっていきました。こんな経費のかかる釣りも初めてです。

仕掛けがない!
 せっかくこれだけ水深のあるポイントに来たのだから、ベタ底には何がいるのか探ってみたくなりました。残り少ないキス仕掛けを投げてサビいてみました。しかし、反応はありません。そのまましばらく置き竿にしたら、ガタガタガタとアタって、写真のヒメジが釣れました。去年、金田湾のボート釣りでこいつが釣れたときは、真っ赤で毒々しいのでリリースしてしまったのですが、後で本で「煮付けて美味」と書いてあってくやしい思いをしていたので、今回は迷わずキープです。

 サビキは使い切って、カワハギ仕掛けも、アジビシ仕掛けも、キス仕掛けも、みんななくなってしまいました。これだけブチブチ切られると、釣ってる時間より仕掛けを交換している時間のほうが長く感じられて、釣れている割には「面白くないなあ」という感じが残ります。まだコマセは残っていますが、そろそろ仕掛け切れです。これまで「エサ切れで納竿」というのはありましたが、仕掛け切れで納竿というのは初めて(^^;

 あ、そうだ、木こりのタックルボックスには、ほとんど使われることのなかったメタルジグやエギが入っているのでした。8lbのナイロン糸を巻いたスピニングリールを取り出してキス竿にセットして、メタルジグを投げてしゃくってみました。水深40mもあれば、何かひっかかるかもしれません。2、3投してみたものの反応なし。そこで真下に落としてバーチカルジギング(って言葉だけは一人前ですが^^;)してみました。すると、高速でしゃくり上げていたら、竿にグワっと重みがかかった! すごい! メタルジグで初めて釣ったぞ! と思ったら、上がってきたのはまたサバフグ(^^; もういいや、納竿。

意外に大漁!?
 午後1時半くらいに帰港して、ボート屋のおばさんに「青い線の入ったアジみたいのが釣れたけど何ていう魚?」と聞いてみたのですがわからないとのことでした。帰路、いつもの熱海ハーブ&ローズガーデンに寄って、木こりの大好きなラベンダーソフトを食べたことは言うまでもありません(^^;

 熱海を14:30頃に出て、17:30ごろ帰宅。それから名前のわからない魚の探索です。「青い線の入ったアジみたいの」は、最初、ムロアジの仲間の「クサヤモロ」というクサヤにする魚ではないかと思いました。釣った当日なら刺身で食べられるということなので、3匹は刺身におろして、残りの4匹は干物にしてみることにしました。帰宅したあぐりと刺身を作って食べましたが、正直あまり美味しくなくて、焼いてみたらそのほうが食べられました。干物はちゃんと干物網に入れてベランダに吊るしておいたのですが、翌朝見ると小さなアリがたかっていて残念ながら全滅でした。

 今回、いろいろと名前のわからない魚が釣れて、ボートの上で喜んでキープしていいのかどうかわからなかったことが釣りの興を殺いでしまっていることに気づいたので、本屋にいってポケット型の釣魚図鑑を買いました。今度から、これを持って釣りに行くことにします。で、その本で調べたら、写真の魚は実はクサヤモロではなく、「ツムブリ」であることがわかりました。「違ってるぞー!」という方はこちらで正解を教えてください。 『海の釣魚』(成美堂出版、杉浦宏監修、2001.5.10)によると「釣りではハリ掛かりしたあとの引きの強さで人気がある。食べてはヒラマサ、ブリにくらべ脂が少なく、やや味はおとる。」とありました。食味は「星3つ」で、マアジなどが星5つ、マハゼが星4つなのと比べると、まあ、中くらいに喜べる魚のようですね。

 カワハギは肝アエに、カイワリとイシダイは焼き魚、ヒメジは翌日に煮付けにして、あぐりと食べました。イシダイの幼魚の焼き魚はポクポクして美味でした。ツムブリはいまいち、カワハギもいつもは美味しいのですが、今回はなぜかあまり美味しく感じませんでした。肝の取り扱いが下手だったのかな。

 ともあれ、フグに悩まされたけど結果的には木こりにしてはかなりの大漁だったと言えそうです。